毎年秋になると入荷する、天然鮎の甘露煮です。簗(やな)ではなく釣り師が1尾づつ釣り上げ、時間をかけて甘露煮にしました。
甘さと塩分を抑え目にして、鮎の香りを楽しめる仕上がりです。

岩手県を流れる和賀川。撮影地点から1キロ下流で東北一の大河、北上川へ合流します。ここで釣り上げられた鮎が甘露煮になるわけです。ここでいう「天然」は天然育ちのことです。春先に稚魚を放流して、和賀川で育った鮎を7月くらいから釣り始めます。勝手に鮎が繁殖して、という環境は本当に少ないのかもしれません。
水中に生えるコケを食べる鮎は、川の美しさが味に反映します。和賀川が育てた天然鮎は最高の品質です。

あまり煮込んだように見えないアユですが、2日かけてじっくり煮ています。
骨まで柔らかくなっていて、箸で簡単に身をほぐすことが出来ます。ワタも身も、鮎の香り=川魚のいい匂い、がします。川にいる普通の雑魚を煮込んでも、こうはならないんですね。柔らかくしようとすると煮崩れてしまいます。ナゼか鮎はしっかりと形を留めて柔らかくなります。
ぜひ頭から尻尾、骨まで召し上がってください。



荒々しい雲が駆け抜けた空の下、川は濁っていました。
2007年、北東北の夏は例によってあっけなく終わり、集中豪雨がとどめを刺したのです。
鮎釣りシーズンがこれから、という時に川が氾濫し、
鮎たちは流されてしまったかと釣り人達は気を揉んでいました。
ただでさえ妙な気候のせいで産卵期が早まり、今年はダメだと噂されていた時期。
それでも、残った鮎がいるかもしれない。
あきらめ切れずに竿を振ると、わずかですが流されずに留まっていた鮎が釣れました。
大きさはマチマチ。早速焼いて甘露煮にしてみました。
・・・すると、どの鮎も腹から砂や小石が出て食えた代物ではありません。
川が濁り、餌のコケが無くなり、耐えかねて石を食べたのでしょう。
生きることへの執念を箸先で感じ、今年の鮎の季節が終わってしまいました。

「今年の鮎は砂で食えたもんじゃない」そんな話が地元で広まったころ、
河原で濁流を見つめていた長老がポツリと言いました。
「あいつら、流されねぇように石喰ってるんだ。」
小さな鮎は砂を、大きな鮎は小石を胃に入れ、
身体を少しでも重くしようとしていたのです。
激流に身を任せて、流されてしまえばどんなに楽でしょう。
でも、決められた1年の命。
命懸けで戻ってきた生まれ故郷の川に留まることを諦めない、
そんな本能が石を喰わせたのかもしれません。

そんなワケで、2007年の天然鮎は終了しました。
長老のハナシの真偽は別として、砂を呑んだ魚は販売できません。
海が荒れれば魚が獲れない。
雨が降らなきゃ野菜が採れない。
雨が降れば川が濁る。
都会に暮らしていると忘れがちな、自然の仕組みに
相変わらず「うけもち」は左右されています。

 


商品は季節商品と市場からの仕入れにつき入荷は不定期となります。 「黒板メニュー」に過去1ヶ月分のメニューを掲載してありますのでご確認ください。


水道橋 立ち飲み処「うけもち」
東京都千代田区三崎町2-15-2
JR水道橋駅 西口